シリア旅行(5)20th Aug. シリアカトリック教会訪問
土曜日です。土曜日は、ユダヤの伝統からいえば安息日になりますけれど(正確には金曜の日没から)、この国では、ユダヤ人というのはもはやほとんどいないようです。シリアは、イスラエルのことを「占領下にあるパレスティナ」と形容し、イスラエル入国記録が、(ここがポイント)パスポートにある人物は入国できません(それゆえに両方の国に入国する必要がある人は、パスポートを二つ持つことになります)。よって、この国にいたユダヤ人は、イスラエルの方に移住してしまったようです。
「シリア・カトリック」というのは日本では非常に聞き慣れない名称だと思います。わざわざ「シリア」と名前を付けているのは、いわゆるカトリックの「ローマ・カトリック」とは異なった伝統を持つからです。
私は、彼にちょっと面白い質問をしてみました。つまり、「あなたは何者か。シリア人、クリスチャン、いろいろあなたを形容するものはあると思うが、結局のところ、あなたのアイデンティティはなにか?」こういう質問です。そして、非常に興味深かったのは、この枢機卿がちょっと考えて、「自分のアイデンティティは第一にアラブ人である」と言ったことです。これは、私は大変に重要なことだと思います。
私は、以前から中東のキリスト教の重要性を強調してきました。その考えが揺るぐことはないですが、このような発言を聞くと、膝をたたくというか、改めて重要なことを教えてもらったような気がします。
彼が「アラブ人」というアイデンティティを第一に出した場合、同じようにアラブ人であることを第一のアイデンティティとするムスリムもいるわけです。そうであるなら、宗教というのは、キリスト教であっても、イスラームであっても、それほど違いがないのではないか、と思いました。いや、実際に、このダマスカスに住む人々にとっては以前から共存していた「身内」なのですから、対立などおきようがありません。同じアラビア語を母語とし、歴史あるダマスカスに住む市民なのです。ここは、対立の場ではないのです。もし、対立の場をもとめるのであれば、やはりヨーロッパなどを見るのが本筋のような気がします。
固い話になってしまいました。このあとは、しばらくホテルでお休み。なにせ、日差しが強く、あまり外にでていると倒れそうです。そのため、しばらく休憩をとることにしました。
夕方からは、カシオン山へ出かけます。ここからダマスカスの街が一望できるとあって、家族連れがたくさん来ていました。
イスラームの色は緑ということもあってか、あるいは他にあまり選択肢がないのか、多くの場所で蛍光灯に緑が使われています。
カシオン山からみるダマスカスも、緑色に染まった部分が多く、昼間の景色とはずいぶんと異なったものでした。
この山は、草木がほとんどありません。昼間見ると、驚くほどの褐色の山です。そして、私たちがほとんど見ることのないものでもあります。そういえば、なかなか星も見るころができなかったです。砂埃が舞ってしまって、星の光を遮っているのではないかと思います。
<つづく>